売上を伸ばすために広告を増やす、SNSを始める、ホームページを作り直す、取り組める施策はたくさんあります。
しかし、何を改善したいのかが曖昧なままでは、時間や費用をかけても成果につながるとは限りません。
まず考えたいのは、自社は誰にどのような価値を提供し、どう選ばれているのかという事業の全体像です。
今回はハイファイブのセミナー資料「売上につながる『事業の整理術』」をもとに、顧客・価値・接点・業務の4つの視点から事業を見直し、取り組む課題を一つに絞る方法を解説します。
最後には、ご自身で取り組める3つのワークも紹介します。
齋藤 功 株式会社ハイファイブ 代表取締役
マーケティング戦略、業務プロセス設計、ウェブ制作、CRM導入を支援。
対話を通じて事業や業務の課題を整理し、現場で機能する仕組みに落とし込むことを専門としています。
セミナースライド
スライドを順番に見ながら読むことも、気になる項目から読み進めることもできます。
本文はスライドの文字を単に書き起こすのではなく、考え方や具体例を補って説明しています。
施策を増やす前に、事業を整理する
こんな悩みはありませんか?

SNSや広告を続けても成果が分かりにくい、自社の強みを説明できない、営業や顧客対応が担当者任せになっている、改善したいことが多すぎて優先順位を決められない。
こうした悩みは、一見すると別々の問題です。
しかし、顧客・価値・業務のつながりを整理すると、どの部分で問題が起きているのかを考えやすくなります。
まずは自社に最も近い悩みを一つ選んでみてください。
施策の前に、事業を整理する

考える順番は、目的 → 顧客 → 価値 → 仕組み → 手段です。
広告、SNS、Webサイト、CRMは、いずれも目的を実現するための選択肢です。
例えば問い合わせが少ないからといって、すぐに広告を増やすことが適切とは限りません。
そもそも誰に何を届けるべきか、問い合わせ後に対応できる体制があるかを確かめる必要があります。
この記事の目標は、施策をたくさん選ぶことではなく、自社の「次の一手」を一つ見つけることです。
事業を4つの視点で整理する
顧客・価値・接点・業務

事業を見るための4つの視点は、顧客(誰に選ばれているか)、価値(なぜ選ばれているか)、接点(どう出会い、選ばれるか)、業務(どう提供し、継続するか)です。
それぞれを独立した項目として扱うのではなく、つながりで考えることが大切です。
どれほど良いサービスでも必要な人と出会えなければ届けられません。
問い合わせが増えても提供体制が整っていなければ、顧客体験に影響します。
顧客は誰で、何を求めているのか

顧客を業種や年齢などの属性だけで理解するのは難しいものです。
困りごと、検討のきっかけ、比較基準、不安まで想像し、必要なら本人に確かめます。
架空の住宅リフォーム会社を例にすると、表面的な要望は「古い設備を替えたい」かもしれません。
一方で、「予算を超えないか」「工事中も生活できるか」といった不安が背景にある可能性があります。
これはあくまで仮説です。実際の顧客への確認が欠かせません。
商品ではなく、選ぶ理由を考える

提供する商品・機能と、顧客が感じる価値は同じではありません。
リフォーム工事という商品を通じて、顧客は「安心して相談できる」「納得して住まいを改善できる」といった価値を感じているかもしれません。
自社が提供しているものを列挙するだけでなく、「顧客はそれによって何を得られるか」を言葉にすると、強みを考える手掛かりになります。
顧客から見た自社の強みを見つける
強みは自社の中だけでは見つからない

自社が得意としていること、顧客が評価していること、他の選択肢と比べた違い。
この3つを重ねてみると、顧客に伝えるべき強みの候補が見えてきます。
自信のある技術であっても、顧客の選択理由とは限りません。
逆に、当たり前に行っている説明の丁寧さや相談のしやすさが評価されていることもあります。
思い込みを避け、顧客の言葉を材料にしましょう。
顧客は何を比較しているのか

顧客は「知る → 調べる → 比べる → 相談する → 決める」という過程で、段階に応じた情報を求めます。
リフォーム会社なら、施工事例、費用の目安、工事の流れ、保証や相談方法などが検討材料になる可能性があります。
顧客の行動は業種や購入頻度によって違うため、これはあくまで整理のためのモデルです。
自社のお客様がどの段階で何に迷うか、実際の問い合わせ内容などと照らして考えます。
伝わらない強みは判断材料にならない

強みを持っていても、顧客が知りたい形で伝わっていなければ、比較・検討の材料になりません。
ウェブサイト、営業資料、口コミ、対面対応の内容がつながっているか確認します。
例えばウェブサイトでは「価格の安さ」を強調し、商談では「丁寧な対応」が評価されるなら、発信している内容と顧客が実感する価値にずれがあるかもしれません。
どの接点でも同じ約束を伝えられる状態が理想です。
事実と仮説を分ける

「紹介からの受注が多い」は、記録で確かめて初めて事実として扱えます。
「顧客は価格より安心感を重視している」は、その理由に関する仮説です。
仮説を確かめるには、顧客へのヒアリングや受注記録の確認が必要です。
分かっていること、推測していること、次に確認することを混同しない。
この小さな習慣が、施策を選ぶ際の判断の質を高めます。
売上につながる仕組みは、集客だけではない
認知から継続までを一つの流れで見る

顧客との関係は「認知 → 興味 → 相談 → 購入 → 継続」と続きます。
この流れの中には、集客だけでなく商談、商品・サービスの提供、購入後のフォローが含まれます。
売上の改善を考えるときは、入口の集客だけに注目するのではなく、一連の流れのどこに改善余地があるかを見ることが大切です。
成果が出ない原因はどこにあるのか

認知が足りないのか、興味を持っても問い合わせにつながらないのか、見積もり後の連絡が途切れているのか。
問題の場所によって、適切な施策は変わります。
例えば、見積もり後の連絡漏れが起きているなら、広告を増やす前に案件の対応状況を確かめる必要があります。
まず原因の候補を見つけ、確認しましょう。
情報の流れも、売上に影響する

問い合わせ内容が担当者にしか分からない、過去の商談や見積もりの履歴が共有されない、次の連絡担当者や期限が決まっていない。
こうした状態では、顧客対応が人の記憶に依存してしまいます。
顧客情報、対応履歴、次の担当者、期限を必要な人が確認できる仕組みにすることで、対応漏れのリスクを減らせます。
大がかりなシステムが必要とは限りません。
「仕組み」とは、事業の活動がつながる状態

顧客を理解し、必要な情報を届け、相談から受注までを整え、提供後も関係を継続すること。
Web、営業、顧客管理、提供業務は、別々のものではなく顧客を中心につながっています。
マーケティング、業務、情報設計を一緒に考えるのは、特定のツールを導入するためではなく、事業の流れを機能させるためです。
課題の原因を考え、優先順位を決める
問題・原因・施策を混同しない

「問い合わせが少ない」は問題です。
「顧客が必要とする情報が伝わっていない」は原因の仮説であり、
「ウェブサイトの情報を追加する」は施策候補です。
仮説を確認せずに大きな施策に進むと、的外れな投資になりかねません。
流入や閲覧状況、実際に顧客から聞かれる質問などを見てから判断しましょう。
すべての課題に同時に取り組まない

候補となる課題が複数ある場合は、期待できる効果と実行のしやすさを仮評価します。
売上だけでなく顧客満足や工数への影響、費用・人員・時間・運用負担も考慮します。
効果が大きく実行しやすいものを優先して検討しますが、評価は確定ではありません。
情報が増えれば、優先順位も見直します。
手段が目的になっていないか

SNSを始める、AIを導入する、CRMを導入する、ホームページを作り直す。
どれも役立つ選択肢ですが、まずは「それで、どの課題を解決するのか」を確認します。
取り組みやすそうな手段から考え始めたときほど、事業の目的に立ち返ることが大切です。
次の一手は、小さく始める
試して、結果を見て、改善する

最初から大規模な仕組みを完成させる必要はありません。
今回の例なら、見積もり後の連絡ルールを統一し、対応記録を共有し、未対応件数や連絡漏れを確認することから始められます。
小さく始めれば、問題がないか確かめながら改善を続けられます。
明日から取り組むことを一つ決める

「何をするか」「なぜ必要か」「いつまでに行うか」「どう結果を確かめるか」を短く書き出します。
例えば「2週間以内に、直近の見積もり案件の対応状況を確認する」です。
まず確認するという行動も、立派な一歩です、最初から解決策を決めなくても構いません。
実践ワーク:自社の事業を整理してみる
講義PDFの25〜27ページには、3つのワークシートが付いています。
印刷して取り組むことも、ノートなどに同じ項目を書き出すこともできます。
個人や取引先に関わる情報を、無理に外部へ共有する必要はありません。
ワーク①|事業整理シート(スライド7/資料25ページ)

目安は5分です。
「主な顧客」「提供価値」「顧客接点」「業務」の4項目を書き出します。
顧客については誰がどんな困りごとを抱えているか、価値については何をなぜ選んでもらえているか、接点については知ってもらう場所や比較の流れ、業務については相談から提供・フォローまでを考えます。
ワーク②|自社の強み発見シート(スライド12/資料26ページ)

目安は10分です。
最初の5分で「顧客から言われた言葉・評価」「自社が考える強み」「競合との違い」を書き出します。
後半5分で、履歴や顧客の言葉で確認できた事実に「○」、まだ確かめていない仮説に「?」を付けます。
「説明が分かりやすかった」と実際に言われたこと、「価格より安心感を評価されていると思う」という推測は区別します。
最後に誰に何を確認するかを一つ決めましょう。
ワーク③|課題と次の一手シート(スライド20・22/資料27ページ)

目安は10分と、最後の行動記入です。
改善したい課題を3つ挙げ、原因の仮説と確認方法を考え、期待効果・実行しやすさを仮評価します。
そこから優先課題を一つ選び、「何を/なぜ/いつまでに/どう確かめるか」を記入します。
ポイントは、課題を3つ書くことより、最初に着手することを1つ決めることです。
事実が足りなければ、確認作業を最初の行動にして構いません。
事業を理解し、仕組みをつくる
今回の内容は5つのステップに整理できます。
- 顧客を理解する。
- 提供している価値を明確にする。
- 顧客との接点と業務の流れを見る。
- 課題と原因を整理する。
- 優先順位を決め、仕組みにする。
施策を増やす前に、自社が誰にどのような価値を届け、その過程のどこで困っているのかを見直してみてください。
大切なのは、何をつくるかより、何を実現するか、今日決めた一つの行動から始めてみましょう。
ハイファイブの読むセミナーシリーズ
業務プロセスの整理からDX化、コンテンツの改善まで、全10回の読んで分かるセミナーを展開予定です。
この後の記事も楽しみにしてください。
業務改善の連続セミナー
01.売上につながる事業の整理術
02.DXの前に考える「業務の見える化と仕組みづくり」
03.業務改善のための仕組みの設計術
04.顧客情報を売上につなげる「CRM活用術」
05.データから考える「改善施策の見つけ方」
06.成果につながる「ウェブサイト改善術」
ex01. 失敗しない「DX導入と要件定義」
ex02. 生成AIを活用した「業務改善と自動化」
ex03. 顧客に選ばれる「自社の強みと言語化」
ex.04 顧客の声から考える「商品・サービス改善術」